(1) いずこの海で幾千年

 倉敷考古館は開館(1950.11)から間もなく60年。この土器は開館いらいずっとケースの棚にならんでいる。全く無傷の完形品。5000年ばかりも前の縄文時代中期(船元式)の土器。西日本では有数の土器として、おおくの図録などに顔をだす。

 館では今、この土器の出土地を〈児島湾底〉とする。ところがこの土器の拓本と図のみが載る古い記録(『考古学』8−1.東京考古学会 1937.1)には倉敷の児島〈下津井町海中〉とあり、個人蔵品である。考古館では開館時に、その所蔵者から購入した。この時所蔵者の言で、発見場所を現在は瀬戸内市の〈牛窓沖〉とした。

 開館からあまり時を経ないとき、この土器は、かつての備前藩主池田家の蔵から明治以後に出たもので、江戸時代児島湾から漁師の手で揚げられ、藩主に献上されていたもの、と伝える人がいた。当時はなおこうした事情を知る人が多く存命したのである。ただ残念なことに、具体的な記録も、誰からの教示かも、いまではまったくわからない。

 土器の表面には貝殻痕や海中での白い沈着物が付着し、内面にはきめ細かい海中出土を思わす泥が残る。海揚がりであることには間違いない。今となっては真実は不明ということだが、周辺の縄文遺跡の状況を考えると、もっとも合理的なのは児島湾底ということなのである。

   昭和25年(1950)11月2日(木) 快晴(開館の翌日である)
 入館者 普通29人 学生15人 学生団体107人 計151人 お天気に恵まれ、入館者が大変多勢で感謝でございます。戸棚搬入、扉をなほす。(まだ旧仮名遣いである)
《当時の入館料 大人30円 学生20円 (団体)30名以上 各20円 10円》
(この頃近くの食堂で、もっとも安い中華そばが30円だった)

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