(22) 雪屋根のツメレンゲ

考古館に近いコーヒー館屋根上に生えたツメレンゲ
 今年(2008年)になって、節分までに数センチでも雪が積もるのは、すでに3度目だ。暖冬続きの近年では積雪もほとんどなかった岡山県南部としては、珍しい事である。倉敷考古館あたりでは、2〜3cmの雪景色でも写真撮影の人が早くから現れる。

 節分の日の雪の朝、外の撮影者に触発されたわけでもないが、ふと雪屋根上のツメレンゲを思い、シャッターを切ったのが今回の写真である。

ツメレンゲについては、すでに20年以上も昔の事となるが1987年に、地方の情報誌である「リビングくらしき」に当時連載していた『倉の中から くらしき見れば』の1月10日号で取り上げている。ここでは正月でもあることから「屋根に門松?」というタイトルで、下のような写真を載せている。その時書いたツメレンゲの事だけを要約すると、次のようなことだった。

 〈岡山大学の卒業生で植物学を専攻したという人が訪れた。学生のとき、間壁が岡大で講義していた博物館学を受講したという縁である。この時、屋根の草がツメレンゲという名前で、東アジア地域の岩場に自生する事から、岩場と条件の似た古い屋根にもよく生えること、またこの植物に卵を産んで、葉を食べて生育するのがシジミチョウだということを教えられた。

 この人は学生時代、この地方でツメレンゲの生えた屋根を調査し、その範囲が岡山空襲で焼け残った地域と一致していたという。またこの植物の最も古い標本は、幕末に日本を訪れたことで知られる、シーボルトが江戸参府途上、広島の鞆の岩場で採集したものだということも教えられた。〉・・・というようなことである。

 ところでこの記事をリビング誌上で読んでいただいた人から、早速にお手紙をいただいた。ツメレンゲの話を聞いた人の友人のようで、なぜご本人の名前を書かないのか、名前を伏せているのは判断に苦しむ。というようなお便りで、館に来られた人の実名も書かれ、ツメレンゲ分布調査の中心人物は○○さんだというような調査の様子などを書かれていた。

 この手紙今も保管しているが、20年の歳月、皆さん如何しておられることか・・・

 昨年11月27日の山陽新聞記事では、ツメレンゲが準絶滅危惧種ということで、岡山大学や倉敷市立自然史博物館の人達によって、倉敷の伝統的建物群の一帯の調査が行われており、15年前の調査より半減以上の減り方だったようだ、とある。昔は屋根にこうした草が生える事は、屋根が古びた事を意味し、家にとって良い兆候ではなかったのだが、今や伝統的な本葺屋根の象徴になったとは、倉敷の本葺屋根群の貴重さを改めて思う。



2008年2月3日 日 雪後雨後曇
 ・・・コーヒー館の屋根上のツメレンゲの写真を撮っていたら、車で来た人が近くで止まり、カメラを持って降りてきて「ツメレンゲですか」と言いながら撮影。新聞紙上でツメレンゲが報ぜられた事もあり、気にする人も多いのだろう。  雪景色撮影に来た人のようだが・・・


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