(37) 閑話及第?鉢巻締めなおし

 「閑話休題」が本来の四字熟語。余談話は止めにして話を本題に、ということのよう、話の接ぎ穂として「それはさておき」程度で あるようだが。とは言え、この「よもやまばなし」で閑話休題となると、もともとが閑話ばかりなので、さて何を本題にしてよいか。

 実はこの「よもやまばなし」は先回で丁度1ヵ年。昨年8月1日の日付からはじまり、1ヶ月に平均3本ずつ載せてきたので、7月最後の36回で丸一年が過ぎたということである。この「はなし」も誰かの目に止まって、多少とも考古館や倉敷の宣伝になればって始めたことだったがたが、とてもそのような状況ではないようだ。

 そろそろ休題にしなければならないのかもしれない。しかしいま少し気長にと、勝手な解釈で「及第」にした次第である。どうか悪しからず・・今後は月に2回程度でということで、しばらくお付き合い頂ければ幸いである。

鉢巻をした須恵質人物像
       (高約7cm)
伝総社市法蓮出土の台付
装飾壷の肩に付く
 「それはさておき」このところ連日35〜37度の酷暑続き、「及第」としたからには、鉢巻でも締めなおしてということになるのだが・・・・一体人間は鉢巻など何時から締め出したのか? 何のためにか?

 倉敷考古館には、開館以来「鉢巻のおじさん」がいる。このおじさんが大好きで、この呼び名を彼に進呈したのは、すでに故人だが、須恵器研究で恩賜賞を受賞した田辺昭三氏であった。

 この「よもやまばなし」の一回目では、考古館最初からの所蔵品で、西日本ではきわめて数少ない完形品として注目されている、縄文中期の海上がり土器を話題にした。そこで2年目の始まりも、この考古館開館以来の蔵品で、これも珍しいものとして注目される、この鉢巻のおじさんに登場いただいた。

 この人物は、岡山県総社市法蓮出土と伝えられる、台付須恵器壷の肩に付く、一握りの粘土で造形された、高さはせいぜい7cmばかりの小人物(左上写真)なのである。こうした人物や動物像を付けた須恵器は、全国でも150例に満たない。人物や動物でなく,小形の壷・坏・高坏などのみ付けた器形は、かなり数も多くなるが、それとても決して多いものではない。こうした須恵器は一括して、装飾須恵器と呼ばれているが、この時期の古墳が万単位存在し、一基の古墳中に幾十もの須恵器を副葬しているのであるから、装飾須恵器の数の少なさも推測されるであろう。

 この種の土器は、古墳時代後期、主には六世紀代後半から七世紀はじめにかけて、墓に埋葬するために制作されている。全形は右下の写真のような形が多く、本来の壷の肩に、小形の壷や馬・鹿・猪・犬・のような動物に、人間も付く。人物・動物などはきわめて簡略化されているが、動物などは上手に特徴をとらえており、人物なども必要部分だけは強調されているので、作者は一定の意図の下に造形表現を考えていたようだ。

伝法蓮出土 装飾須恵器
 ここに示した人物は、胴部に棒状の両手と頭だけ付けたものだが、顔だけは、大きな鼻と目、口も真横に大きくへらで一文字に引いている。そうして頭には細い粘土紐をくるりと巻いて、後ろ鉢巻の形を作っている。いったい何者なのか、この簡略な造形の中では、この小道具に過ぎない鉢巻が、何か大きな意味を示しているに違いない。装飾須恵器上の人物が、鉢巻をしている事例はけっして多くないのだ。

 少し詳しい鉢巻仲間の話は次回にしよう。ともかく小さい考古館で、沢山の展示品が詰め込まれた薄暗いケースの一角で、鉢巻締めてただ一人で立っているように見えるこの小人物は、開館以来、どれだけの人に意識してもらえているだろうか。須恵器研究者には、「鉢巻のおじさん」と呼んで貰ったが、何をしていたかには触れてもらえなかった。1400年ばかり昔の人々の思いと、ある日の情景を背負って、彼は鉢巻締めて、頑張っているのだとおもうのだが。そうして彼にも仲間がいたはずなのである。


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