(42) 雁木騒動

2008年9月17日の考古館遠景
幕の下で雁木の復元中
 先回の「壁新聞」で触れていた事件の一つ、倉敷川の雁木改修(悪)工事は、大変遅きに失しているが、この一帯の伝統的建物群保存が、ただ建物だけのことではない、歴史的景観とは何かを改めて考えさす、一つの事件だったのである。

 実はこれは「・・だった。」のような過去形で書くものではなく、ただ今、今日(2008/09/17)にも、右上の写真に示したように、考古館の遠景写真を撮ろうとすると、工事用の幕に遮られていた状況というように、現在進行形の問題でもあったのだ。

20世紀の初頭頃、大原美術館の創始者でもあり、倉敷紡績の社長でもあった、故大原孫三郎氏が、自宅前から撮影。 正面は中橋、両岸には多くの雁木が見える。
上から1・2・3・4
1.2008/2/7雁木壊し中
2.すぐ出来上がった新雁木
3.7月20日から使用開始の木製船着場
4.9月17日雁木復元中
 事の起こりは今年(2008年)2月7日の朝、考古館に最も近い、倉敷川の雁木の一つが壊されつつあるのに、気付いたことである。この雁木は、夏分には倉敷川を小船で客を乗せて、短い距離ではあるが上下している言わば倉敷川観光舟の、船着場に使用されている雁木だった。

 見る見る古くからある雁木が壊されるので、何事かと、倉敷市に問い合わす一方で、とりあえず写真を撮って、記録しなければと思ってシャターをきったのが、左1番上の写真である。まさに遺跡破壊なのである。

 工事担当者に聞くと、舟への乗り降りが、古い雁木だったら、がたがたでお客さんが危ないから、新しい延べ石に替えるのだ、とのこと。まったくよい事をしていると言う意識である。見れば立派な石の角材がもうそこに運ばれている。古い石はどうするのか聞くと、捨てるのだろうとのこと。

 いったいどこで、こうした決定が行われたのか。この一帯は歴史的な景観も含めての伝統的な建物群として,選定を受けている筈なのだが。

 かつてこの雁木は、倉敷川を様々な荷を積んで上ってきた舟の、船着場として、数多く川岸に設けられていた。まさにこの川が倉敷の町にとって生きた物資流通の動脈だったことの証であり、商家の建物や蔵と一体になった風景こそ、倉敷の歴史的な景観なのである。雁木は磨り減って、がたがたしているのは、そこが、多くの荷を上げ下ろしした人々の足で、どれほど擦りへったか、まさに歴史の足跡ではないか・・・・

 工事は一日で簡単に終わってしまった。市の関係した担当者には、なぜ多くの意見を聞かず、ただ観光客の苦情だけで、いつもそればかりを優先し、本当の観光資源を壊すのか。

 雁木の使用が危険というのなら、取り外しのできる幅も狭い、簡単な木の階段に手すりでも付けたほうが、よほど危なくない。使用しない季節は取り外せるものなら、両方活かせる。立派な石さえ使えばいいと言うものではない・・・と苦言を述べた。

 その時すぐに思いだしたのは、このホームページよもやまばなし「(29)小橋が大橋になった)で取り上げた事で、いつまでたっても、同じことが繰り返されるという思いであった。

改修された雁木は、左写真の2番目である。まるで立派な建造物付属の石段というところ。

 その後、この雁木を見た地元のおおくの人々からも、勝手な改修に強く抗議されることとなり、マスコミでこの事件が取りあげられたのは、ちょうど1ヶ月ばかり後であった。市のほうも非を認め、復元を約束した。また隣の雁木に、木製で取り外し可能の船着場を取り付けたのが7月後半。(左3番目写真)

 雁木は、9月はじめから復元にかかって現在(9月17日)まだ作業中(左4番目写真、19日にほぼ出来上がる)。壊すのは、僅か1日だったが、復元には二十日近くかかるとは。前の工事で古い石は廃棄すると聞いたが、どうなっているのか、見るところでは、ほとんどは別の石に見える。

 古墳石室でも石垣でも、石を動かしてまた復元するには、多くの記録を残し、石に慎重に番号をつけ、それに従ってはじめて本当の復元ができる。雁木の本来がどのようなものだったか、きちんとした図があるわけでもないだろう。何が復元か。ただ似たように形だけ作るのでは、目を欺くに過ぎぬ復元だ。今度は復元の是非をどれだけ検討したのか。復元という言葉が免罪符なのか、すべて税金でしていることではないか。

 古い雁木を壊し、立派な石段を作っていたのだから、今後また間違いを犯さないための戒めのモニュメントにして,側に壊した経緯と「古くは隣の雁木と同じ様なものであった」と説明をつければよい。倉敷を訪れてくださる心ある方なら、倉敷の努力も分かっていただけたと思う。覆水は盆に返らないのだ。・・・・・・それがまたも復元という名のもとの製作とは・・・

 このような事態は、目の前で起こったことなので気がついたが、あちこちで繰り替えされているのだろう。先回の壁新聞ではないが、少々腹いせの文も書きたくもなるもの。


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