(142) アラジンの・・・・・ - よもやまばなし

(142) アラジンの・・・・・
2013/1/15

 タイトル「アラジンの・・・」の点々部分にはなんと言う文字が入るのか?

【アラジンの石油ストーブ】  

左右両端は、日本エイ・アイ・シー社ホームページより引用写真。、中央2点考古館蔵品。   (左2点はシリーズ15タイプか、右2点はシリーズ37タイプか)

 多くの方は「魔法のランプ」と思うのが普通ではなかろうか。言うまでもなくアラビアンナイト・千一夜物語の一つで、我々も普通に知る、世界に広がるおとぎ話。

  ところで当考古館では、この点々部分は「石油ストーブ」ということになるのだが・・・と言うのも実は現在も、アラジンのストーブを使用しているからである。

 このアラジンのストーブ生産には80年の歴史が有るようで、ルーツはイギリス製。なぜ当初の製作会社がアラジンを名乗っているのかは、全く知らないが、案外有名なアラジンのランプにあやかったものか・・・

  ランプもストーブも共に「火」に関わるもの、一方は明かり、一方は熱、と火の持つ重要な特性を分化したものだが、「火」を人類が制御しだした事が、人類を現在の人間にしたのかもしれない。

 人類とは二足歩行とか、道具を作る動物などともいうが、類似の行動は他の動物でも必要に応じておこなっている。だが人類が、下手に関わると生命まで脅かされる「火」を、利用し制御できだしたことが、他の動物との差を広げたのだろう。

  人類の火の利用は、50万年前とも70万年前ともいうが、それは人類の出現時から見れば、かなり新しいことのようだ。だがその後現代にいたるまで、人間は火に始まったエネルギーの発見・開発・利用にまい進してきたともいえる。そうして今や攻守所を変えて、私達はエネルギーの様々な問題に、日々振り廻されているのでは。

 他人事ではない、当考古館では、もっと次元の低い身近な些細なことで、他の博物館施設の人には思いつかないかも知れないが、ちょっとした熱源問題がある。事務室内で使用の石油ストーブの芯なのである。博物館施設で現在もまだそのような古いストーブを利用しているのかと、顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれないが、これが現状である。

  江戸時代の倉を利用して始まった当考古館、すでに60周年を過ぎて数年になる。古いものを扱う館だから、無理をして古いものを使っている訳ではない。開館以来厳しい経営下にあるこうした私立の小さい館では、館自体が、かつての昔の博物館として、展示されても良いような状況といえよう。

  何はともあれ、考古館の冬、寒い倉の事務室の熱源はアラジンの石油ストーブである。考古館の開館当初、半世紀よりもっと昔の話だが、その頃の熱源は、火鉢に入れた炭火。冬、館員が来てまずすることは、七輪で炭火を起こすことだった。

  七輪といってもどれだけ現代人に通用することか・・・・あぁ、あの自殺用の練炭を入れるもの・・・と言うのがいいところか・・・この七輪に新聞紙を丸め、細い木切れと消し炭、それで木炭に火をつけたのである。火鉢の中の炭火は、時に不燃焼になり、頭が痛くなることもしばしば・・・「消し炭」も今では死語か?・・・その頃の火鉢が今も考古館には残る

  アラジンのストーブが初めて考古館にお目見えしたのは、1962~4年の頃と記憶する。どうも日記には出てこない。そこで私達の記憶と、現在も日本でアラジンストーブを販売する、日本エイ・アイ・シー社のホームページの歴史から、ちょっと現在も考古館で保存していたり、使用中ストーブの年代や型式を、考古学の資料並みに推定・・・

  エイ・アイ・シー社のホームページによると、イギリスで1930年代初頭に生産が始まったとある。 日本にはじめて輸入されたのが1957年、(株)ヤナセによる。シリーズ15というタイプ。

  そのホームページ上に示されていた写真が、この欄の写真に示した左端のもの。(ちょっと転載させてもらった)考古館に保存されている一番古いストーブは、その写真のすぐ右隣のもの。

 両者の作りを良く比べてみる、細部までそっくり。考古館のものには、手提げ用の吊手までも残っている。芯の上げ下げに使うハンドルの上には「Aladdin BLUE(ー) FLAME HEATER」とある。ホームページ上の写真は、かなり使用された製品のようだ。社には、すでにこのタイプの良好な保存品はないのだろうか。

 同社のホームページには、1973年に日本アラジン社を設立、部品をイギリスより輸入し、わが国で組み立てだしたとある。これがシリーズ37。そこに載る写真が、ここに示した右端の写真。その左の写真が、考古館で今も使用中のストーブである。

  写真で構造の細部をよく比べると、考古館で現在も使うアラジンの石油ストーブは、シリーズ37とそっくり。床面につく円形の金属製の盤と、タンク脇に付く付属品は、使用の不便さから外した記憶がある。

 アラジン社の歴史によると、1975年にはモデルチェンジしてシリーズ38となり、考古館にあるものとは変わっている。少なくとも考古館では、1973~4年頃に、古いタイプのストーブに替えて、新たに現在まで使用のストーブを購入したものだろう。

  以来、40年の歳月が経つ。同形のストーブは二つあり、近年では交互に使用しているし、途中で、一度は芯だけ交換した記憶はあるが、それだけで、この交換も、20年は優に越す前だったと思う。ともかく40年は使用を続けている。

  現在問題は、芯の寿命が何時切れるかということ。考古館では毎年、使用が終わり片付けのさい、きちんと分解し掃除をして収納してきた。近年ではその都度、替え芯があればと思いながら、なかなかこの様に古いものの芯を探す手間も無いまま、今日になってしまった。芯があったら、まだまだ使えるのだが・・・・

  エネルギー問題だ、エコだ、とは程遠い話なのだが、考古館のような、半世紀も昔の世界もそこにある。ここでは同じアラジンでも魔法のランプの方が通用しそうである。多くは望まない、同じアラジンのよしみ、40年ばかり昔のストーブの芯を、ランプの主よ、持ってきて欲しい。 原子力ではない、小さい火のために。

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